【レビュー】桃色飲茶娘*さあ、世界を滅ぼす力を!
概要
食糧危機の世界で、5人の少女が錬金術を求めて桃源郷を目指す。
ゲームのシステムはワーカープレイスメント。「マナ」を表すウッドマーカーを、「術式カード」の上に置くことで、その効果を適用する。
つまり、「マナ」がワーカーで、「術式カード」がアクションだと考えるとわかりやすい。
「マナ」をすべて置き切ると(必ずしも置き切らなくてもよいが)、「休息」することで使用した「マナ」がすべて手元に戻ってくる。
同時に、「上級術式カード」を1枚獲得する(自分だけのアクションが増える)。これが6枚になると、もう「休息」できなくなり、最後は「パス」してゲームを抜ける。
すなわち、ゲームは6ラウンド行われ、各ラウンドやゲーム終了のタイミングは、プレイヤーによって異なるということ。
最初に5人のキャラから一人選ぶが、この子たちの持つ「固有術式カード」(固有アクション)がいずれも異なり、ゲーム性の変化とリプレイ性の高さを生み出している。
『最後の巫女』との類似点・相違点
『桃色飲茶娘』は『最後の巫女』を作ったラフスケッチの作品で、ゲームボードやそれを移動するシステム、固有のキャラクターカードの存在など、類似している点も多い。
しかしこれは、『アグリコラ』と『ヌースフィヨルド』が同じ作者らしい類似点はあるが、異なるゲームであるのと同様、『桃色飲茶娘』と『最後の巫女』は大きく異なるゲームである。
自分がそうだったように、『最後の巫女』が好きでこのゲームを迷っている人向けに、類似点と相違点を書いてみる。
類似点
まずキャラクターが5人いて、それぞれが固有の力を持ち、ゲーム中にキャラクターカードを裏返すことで力が強くなるという点は同じである。
ただし『桃色飲茶娘』では、一度裏返したら表に戻ることはない(例外あり)。『最後の巫女』のようにタイミングを追求する必要はなく、基本的にはなるべく早く裏返すことを目指す。
次に、ゲームボードの形が似ている。『最後の巫女』同様、レベル1マス、レベル2マス、レベル3マスがあり、ボード上を移動して自分の「拠点チップ」を置くことで、レベルに応じた勝利点が即時もらえる。
「拠点チップ」は自分のボード上に置かれており、「開拓」アクションによりそれをボードに配置する。『最後の巫女』でいうところの「加護」と「建立」だが、今回は一度手元に置くことはない。
相違点
概要にも書いた通り、『桃色飲茶娘』はワーカープレイスメントである。
『最後の巫女』では1日24時間を5ラウンド、計120時間を、コマが後ろのプレイヤーから順に手番を行ったが、『桃色飲茶娘』では時計回りに1手番ずつ行っていく。
ワーカーは『最後の巫女』でいうところの「加護」のように、「鍛錬」アクションによって自分のボード上から獲得できる。『最後の巫女』では、分社チップを取るごとに出来ることが増えたが、『桃色飲茶娘』ではワーカーが増えるだけという、シンプルな作りになっている。(即時ボーナスはある)
ゲームシステムとしては、5つの「元素チップ」を集めて、「術式カード」(アクション)によって増やし、それを使ってマップ上に「拠点チップ」を置いていく。また、元素に対応する「知識」を増やし、その順位によって最後に勝利点が入る。
マップは『最後の巫女』では中心から外に向かって行ったが、『桃色飲茶娘』では外から中心(桃源郷)を目指す作りになっている。つまり、ゲーム終盤の方がインタラクションが強くなる。
ゲーム全体としてはルールは簡単になっているが、「気力」アクションというフリーアクションが強力で、「気力」による選択肢の増加に比例して、プレイ時間も長くなっている。
ゲームの流れ
細かい要素を説明する前に、ざっとこのゲームの流れを説明する。
まずボードの外側にある初期拠点マスに自分の「拠点チップ」とプレイヤーマーカーを置いたら、隣接するマスに応じた「元素チップ」をもらってゲームスタート。
初期状態で持っている「マナ」(ワーカー)は6つ。これは「元素チップ」を集めて「鍛錬」アクションを行うことで増やすことができる。
キャラクター固有の「固有術式カード」や、全員が同じセットで持っている6枚の「基本術式カード」、レベル1から3まであって、全員共通の「上級術式カード」の上に「マナ」を置いて、アクションを実行する。
「抽出」アクションで「元素チップ」を獲得し、「錬成」アクションでそれを変換したり増やしたりする。
「移動」アクションでマスを移動したら、「元素チップ」を使って「拠点チップ」を置く。(開拓アクション)
「拠点チップ」を置くことで個人ボード上に置ける「元素チップ」の上限が増える。
基本的には「マナ」を置き切ったら「休息」を行い、マナを回収しつつ、「上級術式カード」を獲得する。これまで共通アクションだったカードが、自分だけのものになる。
「上級術式カード」の獲得や、アクションによって5つの元素に対応した知識を増やしていく。これは最終的に勝利点になる。
「固有術式カード」と「基本術式カード」は裏返すことで強化される。裏返すには拠点や知識など、カードごとに条件がある。
6回「休息」を行うと、それ以降「休息」はできない。やれることがなくなったら「パス」をしてゲームから抜ける。
「知識トラック」や「元素チップ」、またゲーム中にアクションや拠点を置いた時に得た勝利点で勝敗を競う。
「術式カード」について
「術式カード」には、「固有術式カード」「基礎術式カード」「上級術式カード」の3種類ある。
「術式カード」にはアクションが書かれており、ここに「マナ」(ワーカー)を配置することで、マップ上を移動したり、マップから元素チップを獲得したり、元素チップを増やしたり、マップ上に「拠点チップ」を置いたりできる。
「限定術式」と「消滅術式」以外のカードは、複数回発動することができる。すでに「マナ」が1枚置いてあれば2枚、2枚置いてあれば3枚置くことで発動できる。
「固有術式カード」
キャラクターカードである。キャラクターごとに異なる能力を持っている。
すべて「限定術式」となっており、一度「マナ」を置いたら、回収するまで「マナ」を置くことができない。
両面仕様で、条件を満たしたら裏返すことができ、即時勝利点が3点もらえると同時に、能力が変化する。
「基礎術式カード」
各プレイヤー共通で、ゲーム開始時に同じセットで6枚配られる。いずれも表向きに配置して、ゲーム開始時から「マナ」を置くことができる。
「移動」、「開拓」、「抽出」、「鍛錬」、元素の変換、気力の回復といった基本的なアクションになっている。
また、条件を満たすことで裏返すことができ、即時勝利点が3点もらえると同時に、能力が変化する。
「上級術式カード」
レベル1、レベル2、レベル3のカードがあり、それぞれ山にしてから、プレイヤー人数+1枚表にして、すべてのプレイヤーが使えるアクションになる。
レベル1のカードはゲーム開始時から「マナ」を置けるが、レベル2、レベル3のカードはゲームの途中で、条件を満たすことで置けるようになる。
「上級術式カード」は「休息」のタイミングで、1枚を自分のものにできる。この時、カード右上に書かれた知識を獲得する。カードはすぐに山から補充する。
「限定術式」のカードには、「マナ」を1枚しか置くことができない。
「消滅術式」と書かれたカードは、効果発動後、「マナ」が消滅する。すなわち、ワーカーが減る。カードも消滅し、共通の場に置かれていたらゲームから除外して新しいカードを補充、自分の場に置かれていたら裏向きにする。
個人ボードについて
個人ボードは全員共通で、「固有術式」「マナ拡張領域」「気力トラック」「元素置き場」の4つのエリアがある。
固有術式
自分のキャラクターの固有術式カードを配置する。最初は表向きに置く。
「固有術式カード」の項目で説明した通り、条件を満たすことで裏向きにする。
マナ拡張領域
ウッドマーカーで6ヶ所すべてを塞ぐ。各マスの上に書かれた条件を満たしている場合、「鍛錬」アクションによってウッドマーカーを取り、「マナ」を増やすことができる。
マスにボーナスが書かれている場合、即座にそれを獲得する。
気力トラック
0から12まであり、初期値は3。ゲーム中、アクションや「知識」の上昇により回復できる。
一部のアクションでも使用するが、主に「気力」アクション(フリーアクション)で使用する。
「気力」アクションでは、元素チップを獲得したり、「知識」を上昇させたり、「移動」アクションを行ったり、「マナ」が1枚だけ置かれた「術式カード」から「マナ」を手元に戻すなどができる。(すなわち、「固有術式カード」をもう一度使えるようになる)
元素置き場
3列、計15マスがあり、下の2列は最初、「拠点チップ」が置かれている。つまり、ゲーム開始時は「元素チップ」を5枚までしか置くことができない。
「開拓」アクションによって「拠点チップ」をゲームボードに配置することで、獲得できる「元素チップ」の枚数が増える。
アクションについて
「術式カード」の上に「マナ」を置くことで、その「術式カード」に書かれたアクションを実行できる。
アクションは大きく「錬成」「移動」「開拓」「抽出」「鍛錬」の5つがある。
また、手番中気力があるだけ使用できる「気力」アクション(フリーアクション)がある。
錬成
何かを支払って何かを獲得する。例えば、土1枚を金3枚に変えたり、桃1枚を勝利点に変えたりする。
矢印がない場合は、無償で獲得できる。
移動
ボード上のマスを移動する。「移動2」なら2マスまで移動できる。0マスでも良い。
他のプレイヤーのいるマスには止まれないが、通過はできる。
他のプレイヤーの「拠点チップ」の置かれているマスで止まることはできる。
開拓
今いるマスに「拠点チップ」を置く。「開拓2」ならレベル1マスとレベル2マスに置くことができる。
レベル1マスには「元素チップ」が2枚、レベル2なら4枚、レベル3には6枚必要になる。
「拠点チップ」を置くと、即座に勝利点やボーナスがもらえる。
抽出
自分のいる周囲のマスから「元素チップ」を獲得する。自分の「拠点チップ」が置かれている必要がある。
周囲の「拠点チップ」の置かれていないマスから、そのマスに描かれた「元素チップ」を獲得できる。
レベル3のマスからは任意の「元素チップ」を獲得できるが、その「抽出」で他に獲得した「元素チップ」と同じ元素は獲得できない。
鍛錬
「マナ拡張領域」からウッドマーカーを取って「マナ」を増やす。
マスに書かれたボーナスが得られる。
気力
フリーアクションで、「気力トラック」から気力を減らすことで、いつでも使うことができる。
気力3:「元素チップ」を1枚獲得
気力6:「知識トラック」を1つ上昇
気力6:「移動1」を実行
気力12:自分の「術式カード」で、「マナ」が1枚だけ置いていあるカードを選び、「マナ」を回収する。
知識トラック
「知識トラック」は各元素に対応して5つあり、それぞれ12まで進めることができる。
途中で何ヶ所か、ボーナスとして気力を回復できる。
最後のマスだけは早い者勝ちで、最初に到達したプレイヤーは「桃チップ」を1枚獲得できる。
最終的に、トラックごとに順位に応じた勝利点がもらえる。プレイ人数によってもらえる勝利点は異なる。
最終得点計算
全員が「パス」をしたらゲームが終了し、最終得点計算を行う。
「知識トラック」の勝利点の他に、「元素チップ」は5枚で1点、「桃チップ」は1枚で1点。
それにゲーム中に獲得した勝利点を加える。
なお、ゲーム中は「鍛錬」や「開拓」、「術式」のアクション、「術式」の覚醒(カードを裏返すこと)により勝利点を獲得できる。
同点の場合は、「桃チップ」の枚数、「元素チップ」の枚数、「知識トラック」の数値の合計で順位を決める。
キャラクターの調整
公式サイトより、タオ、サラ、リンの修正情報が出ている。
【内容紹介】拡張セット「桃色飲茶娘 夜桜狂想曲」~vol1. 既存キャラクターの調整~
なお、上記の記事から印刷して使うことも可能だが、拡張セットに調整後カードが封入されている。
タオ
覚醒後が上方修正された。
タオは桃錬金っ子だが、桃から元素を、元素から桃を生み出す「錬成“丹”」の上級術式カードが手に入らなかった場合、手に入れた桃の使い道が限定されてしまう。
そこで、「錬成“丹”」にある、桃から元素を生み出す能力が追加された。
サラ
両面ともに上方修正された。
元々覚醒の遅いキャラだったが、覚醒する時には勝負が決しているケースが多かったらしく、特に覚醒条件が緩くなっている。
リン
全体的に下方修正された。
そもそも初期知識3が強く、レベル2の上級術式へのアクセスも速い上、知識トラックが伸びるために桃の獲得も容易という、強い要素が揃っていた。
初期知識が1に減り、固有術式の使用条件が厳しくなった。一度プレイしたが、それでも十分強いので、元がかなり強かった模様。
公式短縮バリアントルール
公式から、ゲーム時間を短縮するバリアントルールが提案されている。
【内容紹介】「桃色飲茶娘」短縮バリアントルール
『桃色飲茶娘』はこれまでに説明してきた通り、6ラウンドのゲームだが、これを5ラウンドに縮めている。
概要としては、最初から上級術式カードを1枚と、マナの拡張を1つ行った状態でスタートする。
これにより、ゲーム序盤から全開で楽しめる。
自分はまだバリアントルールは未プレイだが、確かに序盤はプレイスタイルが全員似てしまう傾向があるので、思い切って取り入れるのもありかもしれない。
感想
すべてにおいて良い。
『最後の巫女』もそうだったが、キャラクターの能力差により、同じルールでありながら戦略性がガラリと変わるのが面白い。かと言って、このキャラは絶対にこうという戦略があるわけでもない(やり込めばわからないが)。
術式カードを裏返した時の3点とか、拠点を置いた時の点数など、ちょこちょこ入れ忘れるので注意したい。
インタラクションはそれなりにある。特に、限定術式へのマナの配置は、相手が何をしたがっているかを考えないと激しくバッティングする。
ただ一点、上にも出てきた、桃錬金をする上級術式カード「錬成“丹”」が強い。
プレイした後に読んだのだが、公式記事でも、拡張セットのポイントとして、
(3)限定術式「錬成"丹"」(桃→全元素x2)の依存からの脱却
https://ci-en.net/creator/10686/article/554619
を挙げている。
マナの拡張は、点数が高い上、もちろんマナも増えるので純粋に強アクションである。
これを空けるために、全種類の元素と桃が必要になるため、最も効率よく集める方法が「錬成“丹”」になる。というよりむしろ、それ以外に集めるのが(元素置き場のスペースの問題もあって)極めて難しい。
この辺りのことが気になったら、修正後のキャラクターカードも入っているし、拡張を手に入れよう。
サクッと購入したので、またプレイしたらレビューを書きたい。
拡張セット:夜桜狂想曲
拡張『夜桜狂想曲』については、以下の記事で詳しくレビューしています。
涼夏と千紗都と『桃色飲茶娘』
2人プレイでのプレイ記があります!