【レビュー】ワイナリーの四季:トスカーナ(拡張)
概要
『ワイナリーの四季』の大型拡張で、ゲームボードそのものが変わり、これまで夏と冬しかアクションがなかったが、春夏秋冬それぞれにアクションが設けられている。
また、バルクワインの販売により注文カードの運要素が減り、ワインの製造による勝利点を得やすくなった。
起床計画表やワーカーの回収のタイミングも変更になり、戦略性も大幅にアップ。
それでいて、個人ボードには変更がなく、あたかも初めからこういうデザインで作られたゲームであるかのようにしっくりと収まっている。
個人的には『ワイナリーの四季』はこの『トスカーナ』を入れることで完成すると感じる、必須拡張。基本ゲームとの変更点を見て行きたい。
なお、基本ゲームについては以下の記事で詳しくレビューしている。
ゲームボードについて
まず一番大きな変更として、ボードゲームが完全に差し替えになった。
アクションが春夏秋冬に分かれていたり、起床計画表が変わったり、左下に見慣れないエリアがあったりするが、これから一つずつ見て行きたい。
また、ゲーム終了得点が20VPから25VPに変更になっている。
なお、両面になっていて、裏面はこんな感じ。
新しく増えたオレンジ色の設備カードを使う場合はこちらの面を使用する。
『トスカーナ』は必須拡張だと言い続けているが、わざわざ両面が用意されている通り、この設備カードについては、十分やり込んだ後で導入すればよいと思う。
アクションについて
春夏秋冬、すべての季節にアクションスペースができた。
これまで春は起床計画をするだけだったが、起床計画はまったく別のルールに変わり、春はブドウの樹の購入や建設、新設の販促アクションを行う。
夏はこれまでの夏季訪問者や植樹に加えて、ブドウやカード、コインや勝利点を変換するトレードアクションが増えている。
秋には、これまで冬に行っていた収穫や醸造を行う。
そして冬に冬季訪問者や出荷、これまでにもあったワーカーを増やす労働者訓練の他に、ワインマーカーを販売できるバルクワイン販売アクションが追加されている。
起床計画表
手番順を決定していた起床計画表が、大きく変更になっている。
一番最初のみ基本ルールと同様に、ランダムに決めた親プレイヤーから順にニワトリコマを置く。(最初は「1」のマスには置けない)
その後、各フェイズをパスするたびに右に移動させ、そこに記されたボーナスを獲得する。
そして、冬フェイズをパスした人から順に年末の処理を行う。
年末の処理
冬フェイズをパスしたプレイヤーは、まずワーカーをすべて回収する。(これにより空いたスペースに、他のプレイヤーはワーカーを置くことができる)
次に基本ゲーム同様、ブドウとワインの熟成、手札調整、追加収入を行ったら、春の列の空いているマスにニワトリコマを移動する。(まだプレイ中のプレイヤーのいる段でも構わないが、すでに春の列に置かれている場合は置くことができない)
すなわち、基本ゲームにあった親マーカーが右隣のプレイヤーに回して、順番にニワトリコマを配置するルールはなくなり、冬フェイズをパスするタイミングもまた戦略性を伴うようになった。
なお、「1」のマスに置けるのは前の年に「7」のマスを選んだプレイヤーだけで、「7」を選んだプレイヤーは必ず「1」を選ばなくてはならない。
販促
ボード左下に、販促マップが追加された。
販促アクションにより、このマップ上に星コマを置くか、すでに置いてある星コマを移動できる。
新たに星コマを置いた場合は、そのスペースに記されたボーナスをただちに受け取る。
また、ゲーム終了時、各エリアについて単独で星コマを最も多く置いているプレイヤーは、そのスペースに記された勝利点を獲得する。
この勝利点のルールの採用は選択となっている。そんなに複雑なルールではないので自分は入れているが、『ワイナリーの四季』のゲーム性を考えると、やや異色の要素という印象は受ける。
特殊労働者モジュール
ゲーム開始時に、11枚ある特殊労働者カードから2枚を選び、それぞれに異なる形の特殊労働者コマを割り当てる。今回のゲームではこの2枚しか使わない。(これにより、毎回ゲーム性が変化する)
プレイヤーは訓練アクションでワーカーを増やす際、1コイン支払うことで、特殊労働者を雇うことができる。(1ゲームで2種類の内の1種類のみ)
ただし、ワーカーの上限は変わらないので、もし特殊労働者を雇ったら、一人分、通常の労働者は雇えなくなる。
特殊労働者モジュールの選択は任意で、個人的には飽きるほどこのゲームをプレイした人向けかなと思う。
設備モジュール
個人ボードの左側に拡張ボードが増え、設備カードが導入される。
設備カードはアクションや販促ボーナスによって獲得できる。
設備の建設アクションにおいて、持っている設備カードを、カード左上のコストを支払って置くことができる。
拡張ボードの枠の他に、ブドウの樹が植えられていないブドウ畑にも置くことができる。
本モジュールも選択は任意で、やはり飽きるほどプレイした人向けかなと感じる。
感想
何はともあれ、新しいゲームボードは導入してプレイして欲しい。
『ワイナリーの四季』は、この『トスカーナ』を入れて完成すると言っても過言ではない。
バルクワインの販売アクションは、意外と見落としがちにして、最後に強力な得点源になる。
後は、地味ながら、ワーカーの回収タイミングによって、アクションスペースが復活するルールが、かなり戦略性を豊かにしている。
特殊労働者と設備カードは、それぞれの項目で書いた通り、本当にやり込み要素。
設備カードはドロー方式ではなく、最初に4枚配ってドラフトを行い、4枚だけを使用する方法もルールに記載されている(ゲームボードは設備カードがない面を使う)。導入するならその方法の方が良いかもしれない。
いずれにせよ、これらの拡張のおかげで、ずっと遊べるゲームになっている。
もっとも、他にも楽しいゲームはたくさんあって、『ワイナリーの四季』だけをそんなにやり込むかと言われると難しいところ。
『ロレンツォ・イル・マニーフィコ』にも同じことが言えるが、贅沢な悩みである。